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『そう。あなたはまだ閉じこもるのね』
「出たいよ!」
『なら、出てきなさい。それじゃあ、私はもう行くから』
「待ってっ!」
声が少し遠くなったのを不安に感じ、僕は慌てて立ち上がった。
その勢いで脚がもつれ、扉に倒れ込むような形になりーー
ドンッ
「あだっ」
ジリジリと痛む額を摩りながら、身体を起こし、そそり立つ扉と初めて対峙する。
改めて感じる扉の威圧感に、毛穴という毛穴が開き、大きな雫が頬を伝う。
逃げ出したい。
その衝動を笑う膝が抑え込んでくれた。
今出ればまだ、少女を追える。
太ももの横で、手をグーパーグーパーし、思う通りに動いてくれるか確認した。
汗ばんでベトベトする…。
「すぅ…」
目をつむり、息を吸い込む。
冷えた空気が肺深くまで染み渡るのを感じ、思考がクリアになっていく。
体の火照りが引き、脚の震えが大人しくなる。
「よし!」
迷いながらも目を開き、ドアノブへと手を伸ばす。
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