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KAKERU*
壁にかかっている時計を見る。
朝の5時。俺にしてはまぁまぁの時間に起きたつもりだ。
隣からは規則正しい晴空さんの寝息。
起こさないように、昨日乾かしておいてくれた服と持ち歩いていたスマホと財布をもってその辺にある紙と鉛筆で
『お世話になりました。これ以上あなたを巻き込む訳にはいきません。ありがとう。さようなら』
いいたいことは他にもあったけど簡潔にまとめて俺はだまって晴空さんの家からでていった。
家を出て大通りに出るとそこには見覚えのある黒と白の車が1台ずつ。
「はは、もう突き止められちゃったか…はやいなぁ」
他の人ならとんでもない恐怖に襲われたのかもしれないけれどその気持ちさえも俺は忘れてしまった。
だってもう俺の守るべきものは無くなったんだ。
死ぬことに恐怖なんて必要ない。
目の前の2台の車をみて中からあの人たちが出て来るのを待つ。
ガチャ…
ほら、出てきた。
「おい、連れてけ」
後ろについていた男2人にそう命令した人がこの組の頭、信さん。〈シン〉
俺は男2人に両腕を掴まれて車の中に引きずりこまれる。
はぁ…これで俺死ぬのかなぁ
なんて、呑気に考えながらもうすぐ出発する車の中からバックミラーを通して外をみてみたら
「晴…空さん?」
車が出発する2秒前くらい。バックミラー越しに晴空さんと目が合う気がしてそれは俺だけじゃ無かったようだ。
晴空さんは俺の乗っている黒い車めがけて走ってきた。
「晴空さん!こっちくんな!!」
聞こえるはずも無いのに思わず声に出してしまうと、
「あの男。お前を預かってくれてた奴か?」
「そうです!お願いします!最後にありがとうっていいたいんです!!」
必死に叫ぶと信さんは
ニヤッと不気味な笑みを浮かべてから
「そうだなぁ。あいつの死体にでもいっておけばいい。」
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