第1章 森の中の城

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   ゆっくりと外壁に沿って左に大きく回るように進みながら、頭を数度傾け蔓を退け足元の生い茂る草を短剣で払いながら先へ先へと目を配り逸(はや)る気持ちを抑える。入り口となる銀色の門の数歩手前まで来た。その時、シュシルは思わずはっと息を呑みこみ立ち止まった。もう一度辺りに注意を払う。  合歓木や茱萸、様々の蔓蔦に覆われた城は全体を見渡せる門の前に来ても其の風貌は半分位しか目で捕らえることが出来無い、が。 もう一度瞬きして見やった。此れといって変わった所は無い。しかし何か背筋にすーっと冷たいものが走り、何かが特殊な瞳で自分をずっと見つめているような言い知れぬ恐怖が湧いていた。シュシルの汗が襟足の髪迄濡らしているのか日差しをうけてその艶々した茶色の髪の先から雫が落ちている。   
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