第2章 鈴蘭の花

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   ――シュシルの胸がとくんと高鳴る。  踊り場まで上がると、手に持っていた短剣をそっと背の後ろに持ち直し辺りを確認する。東の柱の一つには翼の生えた女神の石像が胸に手を重ねながら微笑みを浮かべ、白い扉を開けるシュシルを見下ろしていた。    …―カチャッと音と共に扉が開かれると中から光の玉が勢いよく飛び出してきた。一瞬シュシルは目を伏せると、そこは吹き抜けの高い天井にシャンデリアのある広い空間でシャンデリアに鏤(ちりば)められたクリスタルが、まるで客人をもてなすかのように、窓からの日差しを受けて満遍なく辺りを輝かせていた。  月白色をした壁紙に亜麻色の刺繍が花の模様をあしらいながら幾重にも連なり描かれ、花の形をしたガラス製のランプが階段沿いに付けられている。    
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