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 ふらふらになりながら中央病院にたどり着いた。ずいぶん手前の廊下まで康介のお母さんの泣き叫ぶ声が聞こえた。  処置室の前に集まっていた制服を着た人が倒れそうな私を見つけ、集まってきた。 「田所美奈子さんですか?」  スーツ姿の男性が進み出てそう言った。 「はい。」 「中央署の丸山です。婚約者の方は残念でした。田上さんは宝石店を出た後、歩道を歩いていたのですが、居眠り運転の車が歩道に突っ込ん来るのに気が付いて近くにいた子供さんかばって、本人はその車に・・・」 「子供さんは?」 「軽いけがで済みました。」  丸山さんと言った刑事さんの声が遠くに聞こえる。かろうじて私は立っていた。 「これを。」  少し色あせたお守りが差し出される。見覚えがある。 「病院に着いた時には意識がなかったんですが、手にしっかり握りしめていたそうです。」  中学の頃に康介に手渡したお守りだった。中を開けてみる。高校の頃の康介と二人。プリクラが入っていた。 「それからこれ。外の箱は壊れていますが、中身は無事です。」
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