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・・・。康介・・・兄弟がいたんだ。
「俺は島野康二。ああ・・・苗字が違うのは、兄貴は母さんについて行って、俺は親父が引き取った。別れたのは俺が5歳の頃。母さんのことは全然覚えてないけどね。」
そう、康介の両親は康介が中1の時に離婚していた。康介はお母さんについて行った。
弟がいたとは聞いたことがなかった。言いたくなかったのか、きっかけがなく言い出せなかっただけなのか、それは分からない。
「会いたかったんだ。美奈子さんに。俺は5歳の頃、兄貴とは別々に暮らし始めたけど、兄貴はよく会いに来てくれた。いっつも兄貴は美奈子さんのこと話してくれた。」
康介はいつも私の話をしてくれていたのだ。康二君と言った彼の弟は、この桜の木のことも知っている。口下手な康介が弟には全てを話していたのだ。意外だった。
「事故に遭う10日前、兄貴に会って31日にプロポーズをすると聞かされた。」
また強く風が吹く。桜の木が大きく揺れた。
「行こう。」
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