13.

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「一週間前に連絡を受けた。念のため俺の携帯を緊急連絡先にしていたみたいで、兄貴に連絡が取れなくて俺に連絡が来たんだ。それで交通事故のあの日、兄貴が今日の予約を取っていたらしいって分かった。」  康二君は神父さんに向けて『ぺこっ』と頭を下げるとバージンロードを逆に向かって歩き始めた。それに続く。 「キャンセルするのが本当はいいのかもしれないけど・・・俺、本当の意味で美奈子さんに兄貴を吹っ切るきっかけを作ってほしかったんだ・・・。教会の人は嫌がってたけど・・・。」  康二君の背中がふと大きく見えた。 「葬式にも一周忌にも出たかったけど、新しい母親がいい顔しなかったし、母さんも出ないでくれって・・・。教会から連絡を受けた後、気のせいかもしれないけど今まで以上に兄貴がそばにいてくれてるような気がして・・・。そしたら夢を見たんだ。」 「夢?」 「うん。夢。兄貴が出てきた。美奈子に会いたい。って。ああ・・・兄貴が俺に会いに来た。美奈子さんに会わせてくれって言ってる。目が覚めても忘れられなかった。」  暮れていく中、星が一つ光った。
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