苦労性の憂鬱。

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利休が黒を好んで選び、古田が金を好み選ぶように。芝山が深い緑を良く選んでいるのは、七哲の中では周知の事実だ。 以前、好きな色の話をした時だったか。姓が「芝山」だから馴染みがあるのかもしれないと、問われた当人は答えていた。 好みについて理由が必要なのかと問われればそれは否であり、在ったからと嗤う事もない。質問をした人間にも話しの流れにもさして深い理由はなく、その後にも続く話題の中に埋もれていくだけだ。 それでも彼が「何となく」と答えられない理由を、瀬田は知っていた。 『嫌いなんですわ』 変わらぬ笑顔で冷たく言い放ったのは、色の話ではない。 己の中に流れるものを指して、彼は言った。
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