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「董卓か。次の戦は嫌な戦いになるな」
ボーっと空を眺めながら、征夜は溜め息混じりに呟く。
洛陽でのことは、ここ建業にも伝わって来ている。
勿論、未来から来た征夜は、董卓がこれから行うであろう、悪政悪行の数々を知っている訳だが、それを口に出すことはない。
歴史が狂うから、という理由ではない。それなら、そもそもここにいる時点で、歴史が狂う可能性は十分にある。
それ以前にこの世界が、征夜の知っている三国志の世界とは別の世界だ。だから歴史のためとか、そんな理由ではない。
理由は一つ。
この戦が、孫家が飛躍するための重要な一歩になるからだ。
既に孫堅の活躍は、各諸侯の聞くところとなっているであろう。
江東の虎、孫堅と。
孫堅の戦は苛烈にして迅速。虎の狩りのように、敵を一撃で葬り去る。
孫堅軍はあれからも各地で、黄巾党の残党や、山賊江賊あらゆる賊退治に尽力してきた。
兵の練度は高く、故に結束も固い。それこそ軍は、一頭の虎のように縦横無尽の動きをする。
征夜自身も少し時間は掛かったが、待ちに待った自分の剣を受け取り、稽古に励んでいた。
刀と呼ぶに相応しいその形状は、征夜の慣れ親しんだもので、手にしっくりと収まると同時に、懐かしさを与えてくれるものとなった。
一騎当千の孫家の武将達には遠く及ばないが、それでも力量はかなり高い。
この前、孫堅に実力を認められた征夜は、晴れて五十人隊の隊長に任命された。
兵を率いたことは当たり前だが皆無であり、調練も同じで、隊長としては未熟だが、その点でも他の将達に教えを請いながら、何とか熟している。
この国の文字についても、孫権のお陰で読む方に関しては問題無くなってきた。
孫権は人に教えるのが非常に上手い。相手の苦手とする点を見極め、そこを重点的に教える。
孫権との仲もかなり良好になり、気軽に話し掛けられるくらいにはなっていた。
「征夜~」
「どうした孫策?」
後ろからもたれ掛かるように体を寄せて来たのは、その孫権の姉の孫策だ。
随分と疲れた声をしているが、何かあったのだろうか?確か今は、周瑜と治世の勉強をしていたはずである。
「公瑾が虐めるのー」
「全く。心外にも程がある」
孫策に非難された当の本人、周瑜が嘆息気味に近づいて来た。
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