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「周瑜が情け容赦無いのはいつものことだろ?」
「うっ、確かに」
「私は鬼か何かか?」
周瑜に軽く睨まれながら、背中にもたれている孫策を引き剥がし、正面から見据えながら話す。
「それでも周瑜は孫策のためにやってるんだし、もうちょっと頑張りなよ」
「うー」
唇を尖らせながら唸る、その子供っぽい仕草を微笑ましく思いながら、孫策を励ます。
「孫策。人の上に立つってことは面倒なこともあるけど、それを成し遂げた時には、民がきっと喜んで感謝してくれるだろ?」
「うん」
「逆に怠れば、辛いのは民だし、苦しむ顔は見たくないだろ?」
「うん」
素直に返事をする孫策の頭を優しく撫でながら、征夜はゆっくりと語り続ける。
「そのためには、今から周瑜と一緒に治世の勉強はしないといけないよな?」
「そうだけど…」
まだ渋るように上目遣いで見つめてくる孫策の精神攻撃に耐えながら、最後まで言葉を出し切る。
「周瑜だって孫策のために、無理してあんな態度取ってるんだよ。本気で辛く当たりたい訳じゃない。それは分かるだろ」
「そりゃ、征夜よりも長い付き合いだもん。それくらいは分かる」
「だったらもう少し頑張ってみようよ」
「……分かった」
やっと頷いたことに安心して一息吐く。
「じゃあ征夜も一緒に勉強しよ」
「えっ?」
「征夜も治世の勉強しないとね、人の上に立つ者として」
「いや~、俺はちょっと用事が」
冷や汗を掻きながら後退りするが、いつの間にやら後ろには周瑜が待機していた。
「それは名案だ、伯符。征夜もそろそろ治世についつ学んだ方が良いからな」
前後を二人に挟まれ、逃げ場を失った征夜に、孫策が追い撃ちをかけてくる。
「征夜が今日は何の予定も無いってことは、皆知ってるよ。それに何も無いから、こんなところに居たんでしょ?」
何故、孫策が自分の予定を知っているかはともかく、今日は確かに予定が無い。
稽古は毎日やっているが、今日の分は終わっているし、孫権との勉強も今日に限って無い。
つまり本当に何の予定も無いのだが、折角の休みを勉強で潰したくは無い。
が、二人に迫られて逃げ切る自身も無い。諦めて両手を上げ、降参の意を示す。
「分かった。俺も付き合うよ」
何がそんなに嬉しいのか知らないが、孫策が元気を取り戻したようで何よりだ。
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