六章 動乱始原

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 思い起こせば、周瑜の教えを受けるのはこれが初めてだが、そこまできつくは無いだろう。    §§§§§§§  と思っていた時期が、俺にもありました。  ただの誇張だと思っていた孫策の言葉は、あながち嘘ではなかった。 「何度言えば分かる。そこはこうだろ?ん?おい」  怒鳴られるより、今の周瑜のように冷静に淡々と責められる方が数段怖い。  てゆうか人格変わってんだろ。  周瑜に平謝りしながら、間違ったところを訂正する。  孫策には軽々しく頑張れなんて言ったが、これは逃げたくなるのも納得である。 「な、なあ周瑜。少し休憩にしないか?そろそろ半刻くらい経ったろ」 「駄目だ」  後ろを振り返り、試しに休憩を提案してみたのだが、素気なくあしらわれる。取り付く島も無いとは、まさにこのこと。 「そんなこと言わずにお願い!」  頭を下げて拝んで見たが、周瑜は竹簡から目も上げないし、次は返事も無かった。  ガクッとうなだれてから、渋々机に向かい直す。 「はぁ。集中の切れた頭では捗らないだろう。少し休憩にしよう」  仕方なく、といった顔色で、周瑜から許可が下りる。  孫策と二人、長く息を吐きながら、椅子にもたれ掛かる。 「孫策。軽く頑張れとか言ってごめんな。わりときついな、これ」 「でしょ?公瑾は学問のこととなると目の色が変わるんだから」 「ほほう?まだ喋るだけの元気があるなら、休憩は必要無いな」  ニヤリと口の端を上げながら、横目で睨みを利かせる周瑜に、今度は二人揃って口をつぐむ。  そんな時、部屋の外から扉越しに声を掛けられる。 「孫策様。至急、広間に来て欲しいとの、孫堅様よりの伝言です」 「分かった。すぐに行くと伝えなさい」 「はっ」  扉の前から居なくなったのが、駆け足の音で分かる。 「そうゆうことだから、私は行くけど、征夜はちゃんと勉強続けてね」 「あぁ、分かったから、早く行った方が良いぞ」  机に肘を突き、その上に顎を乗せながら、もう片方の手をヒラヒラと振る。 「じゃあ二人とも、頑張ってね」  勉強から解放された喜びなのかは分からないが、とにかく楽しそうに、孫策は飛び跳ねるように部屋を出て行った。 「孫策はいつも元気で良いな」 「昔はもっと大人しかったんだがな」 「そうなの?」  周瑜の意外な言葉に興味を引かれ、そちらに視線を向ける。
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