夏休みの始まりは全ての始まり

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公園のベンチに座って途中のコンビニで買ったアイスを食べる。暑いけど気持ちいい。 「ね、夏休みどっか遊びに行かない?」 定番は海かな。 そう言った私に、彼はこう答えた。 「優奈、俺と別れてくれ」 なんですと? 言われた台詞の意味が頭に入って来るまでに、たっぷり三分はかかった。まるでカップラーメン。出来上がるまでお待ち下さい。 ……てか、昨日まで普通だったのに何故? 私、何かやったっけ? ホントに唐突過ぎて、頭の中ではクエスチョンマークが踊る。 手に持っていたカリガリ君がいつの間にか地面に落ちている。 それをもったいないと思う余裕はなかった。 「……えーと、何で?」 「他に好きな子ができたんだ」 「あー、そーですか……」 我ながら、何てマヌケな返事だろう。それだけショックだったんだと思うけど、それに気がつけたのは、結構後のこと。 「……誰?」 聞かなきゃいいのに尋ねてしまった私に、彼はさらりと答える。 「三組の佐伯さん」 「……あー、あの学年一の美人………」 確かに、男子共が騒ぐだけあって綺麗な子だ。由緒正しい日本美人て感じの。 因みに頭も良くて、テスト順位表の上位の常連。 「彼女、俺が好きだって言ってたらしいんだ」 彼はまんざらでもなさそうだった。確かに美少女に好かれて嫌がる男なんて滅多にいないだろうけどさ。 「そっか、それならしょうがないよね……って、ちょっと待て」 頷きかけて、はたと気付く。 『言ったらしい?』 何だ、その仮定型。 ――まさかとは思うけど……。 「……因みに、それ、誰に聞いたの?」 恐る恐るに尋ねると、彼は無駄に胸を張って答えた。 「俺の友達の裕太の彼女の友達の彼氏の妹」 何てお約束かつ突っ込みどころ満載の返答なんだろうか。噂どころか、ガセ以外の何だと言うのか。 ピクピクと動いてしまうこめかみを押さえながら、必死に冷静さを保とうとして、私は更に質問する。 「……要するに、アンタはその信憑性のない、誰が言ったかもよくわからない話を信じて、私を振って、佐伯さんに乗り換えようってわけ……?」 私の問いに彼は「人聞き悪いことを言うなよ」と眉を寄せた。 「俺はちゃんと佐伯さんを好きになったから、今の彼女の優奈を捨てるだけだ」 「ほとんど同じでしょーが!!」
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