カナリア

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カナリアが鳴く 夜が赤く染まっていく 王が僅かな息で言う 「お前に自由をあげよう」と カナリアが言う 「翼はとうに折れています。 折ったのは、貴方でしょ?」と 飼い殺しが長かった 傍に置くだけ置いておいて 触れる事も、貶す事もしなかった 憎しみだけを抱かせてくれれば、 この翼も折らずにいられたのに 優しさを見せるから 見守るようにいてくれたから 寄り添うだけの時間が穏やかだから 「私を殺すのは、貴方の優しさです」 静かに言う 王が、僅かに笑った この上ない、幸せそうな顔で 「ならば、歌っておくれ」 毎夜の歌を、子守唄のように カナリアの声が聞こえる 優しい籠の鳥の歌 全てが灰に消えるまで
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