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日の暮れなずんだ外を歩くと、春とはいえ夕方の風は思いのほかひやりとしたものを含んでいる。
今日は、一日、マルタの告白を受けた衝撃を引きずって過ごした。
妻のある男に恋心を抱くようになり、道ならぬ思いと知りつつ、断ち切れないのだという。
告解室で色恋沙汰の懺悔に耳を傾けるなど今更珍しいことではない。
が、幼い頃から見知っていた教区民の、特に彼女のそうした話は聴きたくなかったと、現実に耳にしてしまった今、改めて思う。
男の方では妻を一途に愛しており、他の女を寄せ付ける余地はないとマルタが話してくれたのがせめてもの救いだ。
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