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「もう、邪(よこしま)な思いは捨てたかね」
ただ座っているだけでも滲んでくる汗を拭いながら、娘に再び問う。
あの告白から三ヶ月余り、毎週のこの時間は彼女と向き合っているが、いつもその時間を心待ちにして迎え、体の奥がじりじりするような苛立ちと失望を募らせながら終える。
「邪なんかじゃありません」
マルタは潤んだ目で反駁(はんばく)する。
その赤くなった白目と桃色に染まった目の縁(ふち)に、腹の底がカッと燃え上がる。
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