『奴隷区』超書評(スーパー・レビュー)

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 お姫様カフェの「お姫様」シヲリは、現実世界では真逆の女性であり、そんな彼女の元へとやって来る美少女・中野ちゃん。 ……実は、この中野ちゃん(以下略)  その後、見てくれはガタイの良い黒人なのに、列記とした日本人・ゼンイチが、何と『犬』と勝負し、奴隷になるなど、奴隷区の戦いは一層ヒートアップして行く。  犬ことズシオウマルは、物語の根幹を成すアイテム『SCM』開発と密接な関係があり、その秘話や製作者のドラマ・バックボーンも奥深いことこの上ない。  他人の家に潜入する場面や、赤と赤のSCM識別GPS接近シーンには、手に汗握る程の興奮を覚えたものだ。  今作は、勝負モード以外にも、数多くの描写(内面・情景共に)の中に読者をもてなす=エンターテインメントの要素が多々組み込まれていて、実に嬉しくなってくる。  ジャマイカン・クラブのVIPルーム。  格闘のアクションシーンもふんだんに描かれているが、その会話の応酬やほんのわずかの所作にも手を抜かない『岡田マジック』が炸裂。  こけおどしだとばかり思っていたら、その武器がコンパクトな改造銃だったことを知った瞬間、私は叫び声を上げてしまった。 (しかも、それが暴発するまでの伏線が完璧。最高級のスパイ映画並みだ)  これから、私はフェイクで相手を驚かす場合に、「このBB弾野郎が!」という決め台詞を用いる様にしたいと思う。しかし、そんなチャンスないだろう。  閑話休題。  奴隷の主人が切り替わる=苦痛。  これが、読んでいるこちら側にもダイレクトに伝わるのが凄まじい。   どんな物語であれ、登場人物に共感(もしくは反発)がなければ、作品世界には入り込んでもらえない。  それだけに、ここまでの沢山の登場人物が姿を現す、今作品『奴隷区』の魅力の最大のポイント。  やはり、誰に感情移入するか? に掛かっているのではないだろうか。  23通りの読者の読み方によって、または何度か読み返す内に、全く異なる楽しみ方が出来るというお得感がある!
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