1.その目覚めは真冬の朝に似て

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   真希は男の背中に足を押し付け、鎖を強く引く。 みるみるうちに男の顔が紅潮し、次第にそれが紫色へと変色していく。 「グッ、……ガハッ」 男は空気を求め、首の鎖を外そうともがく。 しかし、鎖の片一方は自分の手首に繋がれており、思うように動けない。  このクソ野郎、どーゆーつもりであたしをこんなとこに連れ込んだか知らねーが、タダじゃあ済まさねー。 「いい気味だな、おい。 なんとか言ってみろよ、このボケ!」  真希が鎖を更に強く引き絞り、勝ち誇ったように言う。 しかし、男も黙ってはいない。 手錠のついていない右手で首に巻かれた鎖をなんとか緩めようと死に物狂いで暴れまわる。 単純な腕力だけで言うならば真希よりも男のそれの方が当然強い。 「てっ、テメー……、やる気かこのクソッ!」 真希も負けじと鎖を握る指に力を込める。  
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