1.その目覚めは真冬の朝に似て

13/43
前へ
/127ページ
次へ
   い、一体、何が、どうなってッ…… わけが、わかん、ねえっ……  男――中村 則雄(ナカムラ ノリオ)の身体は、窒息状態にあった。 血圧、脈拍、そして血中二酸化炭素濃度が急激に上昇し、酸素の不足によるデオキシヘモグロビンの増殖がチアノーゼを引き起こしている。  くび、てじょう、どゆこと、くるしい……  そもそも中村にはほとんど状況が飲み込めてはいなかった。 目が覚めた途端に真希によって鎖で首を絞められ、何が起きているのかも理解出来ぬまま、ただ苦しさゆえに抵抗していただけである。 しかし、窒息状態が続くにつれ次第に四肢から力が抜け、意識も朦朧とし始めていた。 「ぐ、おおおぉぉッ……!」  それは単純に中村自身の生への執着だった。 薄れゆく意識と失われていく感覚を総動員し、手錠の繋がれていない右腕で鎖を掴み、それに全身の体重をかけてベッドから転がり落ちる。  
/127ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加