1.その目覚めは真冬の朝に似て

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  「――ッ!!」  真希の視界が大きく揺れ、周囲の景色が色とりどりの線を描いて流れる。 それはほんの1秒足らずの落下に過ぎなかったが、中村もろともベッドから転がり落ちた衝撃は、目の前に星を散らせるには充分だった。  真希は2、3度頭を振って飛び起きると、中村の方へと向き直る。 中村もまた首元を押さえて何度か咳き込みながら立ち上がり、虚ろな瞳で真希を見据える。 「……このクソ野郎……!」  向かい合う真希と中村。 二人の間には目に見えない壁があった。  手錠をかけられ、見覚えのない場所での覚醒。 そこに至るまでの記憶はなく、何故そこにいたのかは見当もつかない。 真希は中村を敵だと認識し、先制攻撃を仕掛けた。 中村は目覚めた途端、訳もわからず絞殺されかけた。  2人は、互いに互いを理解する機会を失ってしまっていた。  
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