37人が本棚に入れています
本棚に追加
「――ッ!!」
真希の視界が大きく揺れ、周囲の景色が色とりどりの線を描いて流れる。
それはほんの1秒足らずの落下に過ぎなかったが、中村もろともベッドから転がり落ちた衝撃は、目の前に星を散らせるには充分だった。
真希は2、3度頭を振って飛び起きると、中村の方へと向き直る。
中村もまた首元を押さえて何度か咳き込みながら立ち上がり、虚ろな瞳で真希を見据える。
「……このクソ野郎……!」
向かい合う真希と中村。
二人の間には目に見えない壁があった。
手錠をかけられ、見覚えのない場所での覚醒。
そこに至るまでの記憶はなく、何故そこにいたのかは見当もつかない。
真希は中村を敵だと認識し、先制攻撃を仕掛けた。
中村は目覚めた途端、訳もわからず絞殺されかけた。
2人は、互いに互いを理解する機会を失ってしまっていた。
最初のコメントを投稿しよう!