Act.6

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 手元でモヒートの入ったグラスを弄びながら、俺はここまでの展開で二丁目について感動していた。なんか、すげえ。なんとなく、すげえ。すげえしか言葉がないけどすげえ。いやーなんかいままでゲイの人についての漠然とした勘違いを全部覆された気分だ。ゲイだからって怖いとか怪しいとかぼんやりとしたイメージがあったのだけど、すげえいい人ばっかじゃん。サンプルがさっきのお兄さんと須永さんしかないけど。  俺は一口モヒートを飲むと、感動するのはそこまでにしてカウンターへ視線を飛ばした。須永さんの隣には柄シャツを着た小柄な男の人が座っている。この人もゲイなのかな。横顔しか見えないけど、黒縁の大きなメガネをかけている。 「彩ちゃん最近どうなのよ、彼氏できた?」  いままで俺のわからない、恐らく共通の友達の話をしていた二人の話題が変わった。俺は耳をそばだてる。 「そんな急にできるか」  須永さんの返答に、メガネの人はけらけらと笑う。 「そうよね~いくら彩ちゃんでもそれはないか」 「言っとくけど、俺はけっこう理想高いからな」 「知ってる」  そう言って、メガネの人は笑いながらショットグラスを傾けた。 「ねー、でもさ、気になる子もいないの? 出会いあるでしょ、彩ちゃんなら」 「気になる子……は、いないこともないな」  俺は若干前のめりになる。 「えー誰よ、どんな子?」 「バカな子」  そこで須永さんがくすりと笑った。彼の傾けたグラスの氷がキャンドルの光を反射する。俺はいまの須永さんの言葉を脳内で反復していた。「バカな子」って……誰だ? 俺? なわけないよな。でもバカって言われれば、俺バカだしな。 ……い、いやいやいや、俺だったらどうすんの、逆に、と自分で自分に突っ込む。ナイナイナイ。俺なわけがない。だって俺、須永さんに押し倒されたし。須永さん、本当に好きな子には積極的になれないみたいだし。って、押し倒されておいてその気がなかったってのもなんか、こう、悲しくないか? いや、残念って意味では決してなくてだな!
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