Act.13

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Act.13

 焦る気持ちが通じたのか、電話のコール音は一回で止んだ。俺は走りつつ声を張り上げる。 「アンタいまどこ!」  電話の向こうで須永さんがぽかんとしているのが想像できる。一拍の間を置いて、彼は気まずそう答える。 『お前の家……、の、近く』 「はあ?!」  俺は駅の券売機の前で大声を出した。ポケットに入れていた財布を取り出そうと動かしていた手が止まる。後ろから視線を感じて振り向くと、おばあちゃんがお財布を握りしめてこちらを窺っていた。俺は慌てて券売機の前からどく。駅の構内の柱に背中をもたせて、落ち着けと念じる。 「俺の家の近くに、いるんですね?」 『……いる』  須永さんはやたら歯切れが悪い。きっとこの間のことを気にして来てくれたのだろう。俺はケータイを握り締めた。 「そこで待っててください。十五分で行く」 『……』 「返事は」 『……わかった』  彼はきっと悪い予想をしている。その予想が間違っていることを早く教えなくちゃ。幸か不幸か、ここから俺の家までは歩いても行ける。電光掲示板を見ると、次の電車は十分後。走っていけば同じくらいの時間に着く。ただホームで待っていることなんてできそうになかった。 「絶対そこ動かないでくださいよ!」  俺はそれだけ言うと、返事も聞かずに電話を切った。スニーカーのつま先をトントン、と地面に打ち付ける。はあ、と大きく息を吐いて一度目をつむると、俺は走り出した。
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