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そう言えば意外に律儀だし見た目に寄らず優しくて仲間思いだから忘れてしまっていたが大和は元来狼と称されたほど荒々しい雰囲気を持っているのだ。
「悠を手に入れんだよ、心も身体も全部まるごと喰って俺のもんにする。……ずっと機会をうかがってた、どこまでならアイツが許すのか少しずつ試しながら、その範囲を広げながら待ってたんだよ」
もう十分我慢しただろ?
悠は大好きな音楽を俺としているから俺のこと拒否も拒絶もできないだろうし。
キセイジジツ?だっけ、作っちまえば後は別に後付けでも構わねえしな。
大和の言うとおりだ、悠は音楽のためならなんだって捧げてしまいそうな危うさがある、その献身と言えば聞こえはいいがいっそ依存に近い。
「……悠は大和のこと音楽仲間だって言ってた。付き合ってない、って」
「今はな。……でもアイツもてるから牽制はしとかないと。今は付き合ってなくてもどっちにしても俺はアイツを手に入れる、全部喰っちまうのは決まってんだから」
そう嗤う大和は時計を見てすぐに顔を変えた。
あの獣のような鋭い瞳も欲望でぎらついた光も綺麗に理性の下に押し隠されいつものように明るく笑っている、フリ。
んじゃ、お先に。
そう笑った大和にぽんと叩かれた肩がいつもよりじんと痛みが残った気がして、思わずその場に立ちすくむ。
バカザルなら大丈夫だとは思うけど、悠には一切手出すなよ?
出ていく瞬間こちらを振り返った大和の瞳は薄暗く、恐ろしくて空雅はとにかく首を人形のようにかくかくと上下させたのだった。
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