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【音楽仲間空雅の種明かし】
「大和ー重いよー」
はよ、まるで囁きかけるかのように耳元で聞こえた挨拶とともにのしかかってきた大きな身体に。
文句を言いつつほとんど変わらぬ表情のままに挨拶を返す悠にたまたま自分のクラスから隣のクラスの前を通りすぎようとした空雅は溜息をついた。
またか。
――なぁ、知ってるか、これでこいつら付き合ってないんだぜ?
定番化された台詞を内心で呟いてさらにいちゃついているようにしか見えない悠曰く音楽仲間、を観察する。
大和はどろっどろに甘い瞳で、いつもはどこか獣のように鋭いはずなのに。
悠は悠でポーカーフェイスながらも僅かに頬を染め嬉しそうにしている、ような気がする。
なんでそんな手つきで悠の頬を撫でてんの、いやいいけどな別に!!
微妙に大和の手つきいやらしいんですけど!!
こう指で目尻からゆっくりと指先で辿り頬を大きな掌で包み込むように何度も撫でるその仕草は半端なくいやらしい。
それ場合によってはセクハラだからな、くそうイケメンがやってるせいかぱっと見セクハラには見えないのが腹立たしい。
そう赤い頬で心中で呟いているのはきっと俺だけではないはずだ。
砂どころか砂糖を吐き出しそうな顔をしている大和の隣の席の生徒と俺は恐らく同じ顔をしているのだろう。
「昨日、お前きちんと寝なかっただろ。隈ができてるぜ」
「新曲が浮かんじゃってさ」
隈を撫でながら目の下に口づけた大和に確実に教室はあり得ない空気に包まれた。
こいつらつきあってんだろ、大半のクラスの奴らはそう思ったはずだ。
しかし、騙されてはいけない。
こいつらはあくまでも音楽仲間、なのである。
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