260人が本棚に入れています
本棚に追加
「……大和」
音楽室でたまたま2人になってしまったところで空雅はおそるおそる違和感の理由を訊ねてみる。
その違和感が勘違いだといいと願いながら、
「お前って悠のことどう思ってるんだ?」
その言葉に首を傾げて不思議そうにどうって音楽仲間だろ、そう平然と返す大和はまるで心からそう思っているようでそうだよなと笑ってしまいたくなる。
それ以上何もないよな、そういつものように笑ってしまいたくなる。
きょとんとしているように、純粋なように見える大和の様子にそうしたくなりながらも空雅はもう一度同じ言葉を繰り返す。
少しだけ言葉を換えて。
「お前って悠のこと音楽仲間だと思ってるんだよな?」
それ以上はないんだよな、そう虚しく笑う空雅に大和はもうばれてんのかと息を吐き出した。
ばれてんなら隠す必要ねえじゃねえか、なんだばれてねえと思ってたから知らんぷりして何も知らない顔をつくって答えたのにな。
そう笑う大和は見たこともないような顔をしていて、いつもは真っ直ぐなその目には欲望でぎらついていた。
まるで肉食獣のようでおどろおどろしい。
思わず息を飲み込み、見上げる形で同じ音楽仲間の言葉を待つ。
「お前の考えてる通りだぜ、俺はアイツのことそういう意味で好きだし早くアイツの全部を手に入れて食っちまいたい。でもこんなにアピールしてんのに気づかねえの、ほんと鈍いよなあ。まあ少しずつ距離を縮めて最近じゃ頬にキスしたくらいじゃ抵抗もしなくなってきたし、そろそろかなとは思ってんだけど」
「……そろそろ?」
なんだよ、んなの決まってんじゃねえか。
そう嗤う大和は本当に獣だった。
.
最初のコメントを投稿しよう!