貴女の愛した人は……

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話が前後するけど、彼女の涙…… 一回目は、きっと貴方の兄弟からの非情な仕打ちがあった時だったのかな… 『お父さんが生きていたらなぁ……』 と、貴方の形見のベンツを運転しながら、ほんの一筋流したの。 子供の私は、お尻の穴に力を入れ 『今更そんな事言っても仕方ないじゃん』 と泣きそうになるのを堪えて、今思えば冷たい言葉を吐き捨てていた。 二回目は、何があったから分からない。 私が高校生だった。 夜、ワインを飲んでいた彼女は悪酔いしたのかな。 『〇(貴方の名前)の馬鹿ぁ…… どうして死んじゃったの……… どうして私を残して逝ってしまったの………』 と、子供の様にわんわん泣いていた。 掛ける言葉など高校生の私は持ち合わせていなかった。 ただただ彼女が泣き止むのを待つしかなかった。 次の日、バスケの試合があったが、当時父親の様に慕っていた先生に電話をして、泣きながら明日休ませて欲しいと伝えた。 翌日の彼女は何事も無かったかの様に、昨夜の出来事を忘れる訳も無かったが、振る舞っていた。 私は学校へ行った。 先生の顔を見た途端に、昨夜から堪えていた涙が溢れ出した……… 今でこそ 『おかんにはワイン飲ませるな』 と笑い話となっているが、この歳になって、いくつもの出会い、別れを経験した中で、唯一私の中で励みになっている事があるの。 貴方の愛した人は、自分が人生の幕を閉じない限り貴方には逢えない…… でも、私は、私の愛してきた人には、望めば逢えると言う事。 そう思ったら、失恋して体が痛くなる程泣いても、彼女の貴方への想いに比べたら、なんて事はないんだ……と思える様になった。 勿論、今だから思える事だけどね。
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