第1章

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子供「英語でも日本語でも『私には兄弟がいます』とか『私には姉妹がいます』っていう文があるのに『私には親がいます』っていう文章はどこにも出てこないんだ」 M「なるほど。その答えは簡単です。兄弟や姉妹がいるのは人それぞれですが、親というのは誰にでも等しくいるからです」 子供「本当に? なら僕にも親はいるの?」 M「もちろん、そうですよ」 天井からスクリーンが下りてくる。 映し出された映像に注目する子供。 スクリーンには人間たちが和気藹々と過ごしている映像が映し出されている。結婚式にて、周りから祝福される二人の男女と一人の子供の映像。なのだが、モスコミュールが加工したため、映像の中に子供の姿は無い。 子供「あれが、僕の親」 瞳を輝かせている子供。 モスコミュールのほうには、専用チャンネルから通信が入ってくる。基本的に、ダイキュリー、ギムレット、モスコミュールには専用チャンネルが設定してあり、3機だけでの会話の際には、子供には聞かれないようにしている。 D「なぜ嘘をつく? あの映像に映っているのは、別の子供の親なのでは?」 G「わたしたちが出発前に見たものだな」 M「あの子の親の映像はありません。あなたたちも知っているでしょう? 体外受精によって生まれた彼の情報を、データバンクで調べたものの、すでに彼の親のデータは破損していたということを」 D「嘘をつく必要は?」 M「他の誰かと違うことに対して、彼が恐怖するのではないかと、私は考えるからです」 G「それもまた正論か」 D「だが矛盾している。彼が、すべて嘘だと理解したとき、彼はどうなる? ずっと騙されていたことに気づいた彼は一体どうなる?」 M「嘘だと気づかれないよう、力を尽くすつもりです」 ほどなくして、モスコミュールは「ブラックホールを潜り抜け、別の宇宙に渡る」というプランをダイキュリー、ギムレットに提唱した。 この宇宙は、地球外生命体たちで溢れている、と思ったからである。 ブラックホールを求め、旅するダイキュリー、ギムレット、子供を乗せたモスコミュール。そして、一同はブラックホールを発見する。だが、そこには、まるで門番のように宇宙生命体たちが待ち構えている。それを退けるために、モスコミュールからの連結が外れ、ダイキュリーとギムレットが宇宙生命体の群れに向けて発進する。 D「我に続け、我が行軍のあとに残るは勝利のみ」
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