近くて遠い体温

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「カムしなよ。誤魔化し続けられる歳じゃなくなって来るし、恵斗も吐き続けるのツラいでしょ?嘘」 現実問題、学生で無くなれば結婚を視野に入れた男女の付き合いは増えるし。 紹介するのが恥ずかしい、なんて甘い言い訳は出来なくなって来る。 それに恵斗も、一人っ子で愛されて育った人間。たまに両親の話をする時も照れながらも幸せそうだったりする。 「分かってんだよ……分かってんだけどなぁ……」 上半身をベッドに投げ出して、目の上に腕を置きながらぼやく恵斗。 「やっぱ、ツラい思いさすよなぁ……」 「それがアタシらの業だよ。ソドムの街じゃないけど、永遠に焼かれ続けるんだよ」 自分だけじゃなく、身内にまで降り掛かる厄災。それは聖書の一節と重なる気がした。 聖書では10人の正しき者が居れば赦されるとあったのに、結局滅ぼされたその街。 正しい人間の家族だけが逃げ延び、それ以外は硫黄と火で滅ぼされたとか。そんな話。 何かの逸話なんだろうけど、現代でも人間なんて然程変わらない。 少し人と違うだけで糾弾される。 死の救いがあった昔の方がまだ異端に優しかったんじゃないかとすらアタシは思う。
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