近くて遠い体温

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「そろそろお腹空かない?」 「あー、減ったかも知んね」 どちらからともなく、のそのそと起き上がり。ベッドの脇のテーブルに近いアタシが煙草のパッケに手を伸ばす。 「ほい、何食べんのー?」 「テキトーにあるモンで作るわー」 並んでベッドに腰掛けながらアイツにクールのパッケを渡す、アタシも自分のセッターを逆さにして数度テーブルで叩いてから銜えた。 「オッサン臭いから止めろよな」 「メンソばっかだとインポになるってさ?」 たまーにする、お決まりの言い合い。アイツのジッポを借りて、石を擦る。 どちらからともなく顔を近付けて、一つの火で二つの煙が上がった。 最初の一口か二口だけ、ジッポで点けた時の味とメンソールの香り。 それが案外嫌いじゃない。 「ってかさー、なんか長い付き合いになってきたねー」 「まぁな、10年近いんじゃね?」 二人して煙と言葉を吐き出して、漂ってからぼんやりと消えていく。
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