§1 食券1週間分

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「遅い」 玄関に差し掛かったところで、 羽鳥に声をかけられた。 「え?あ…攻め」 「はあ?」 「あ、いやいやこっちのこと  って、約束してたっけ?」 「今からするところだ。  お前これから何かあるか?」 「あ、いや、帰るところだけど。」 「ならちょっと付き合えよ。」 「え、えーと…」 ちらりと隣の彩夏を見ると、 今にも壊れそうなほどひきつった笑いを浮かべて 「あ、私のことは気にせずに!どうぞどうぞ!」 って、物か?あたしは。 「じゃ、行くか。」 「ああ。うん。  ごめんね彩夏」 「いいよいいよ!いってら~!」 引きつった笑いを必死で押し殺して、 手を振り、あたしを送り出す彩夏は、 絶対なにか企んでいる。 っていうか、 この羽鳥の方がもっと謎なんだけど。 (「攻め」は置いといて…) はるか頭上の彼の顔を見上げた。 別段変わることなく、むすっとした表情からは、 何も読み取ることはできない。 これ以上は首が疲れそうなので、 黙ってついて行くことにする。
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