19人が本棚に入れています
本棚に追加
「遅い」
玄関に差し掛かったところで、
羽鳥に声をかけられた。
「え?あ…攻め」
「はあ?」
「あ、いやいやこっちのこと
って、約束してたっけ?」
「今からするところだ。
お前これから何かあるか?」
「あ、いや、帰るところだけど。」
「ならちょっと付き合えよ。」
「え、えーと…」
ちらりと隣の彩夏を見ると、
今にも壊れそうなほどひきつった笑いを浮かべて
「あ、私のことは気にせずに!どうぞどうぞ!」
って、物か?あたしは。
「じゃ、行くか。」
「ああ。うん。
ごめんね彩夏」
「いいよいいよ!いってら~!」
引きつった笑いを必死で押し殺して、
手を振り、あたしを送り出す彩夏は、
絶対なにか企んでいる。
っていうか、
この羽鳥の方がもっと謎なんだけど。
(「攻め」は置いといて…)
はるか頭上の彼の顔を見上げた。
別段変わることなく、むすっとした表情からは、
何も読み取ることはできない。
これ以上は首が疲れそうなので、
黙ってついて行くことにする。
最初のコメントを投稿しよう!