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サラサラの黒髪の下から覗く目はくりっと丸くて、瞬きをするたびにあちこち泳ぐ。
おろおろと物静かで気弱な性格が、176㎝も本当にあるのかと思わせるほどの猫背から分かるくらいだ。
「よ、和遥」
「あっ…ど、どうも…」
俺が呼んで返事をしたこいつは、城戸和遥(キドカズハル)。俺がまともに話すのは響也と天磨、そしてこの和遥の3人だけ。
「い、今からぶぶ部活…ですかっ」
「そうだよ~。カズくんは塾~??」
「はははいっ」
もう何度も話しているって言うのに吃りながら語尾は跳ね上がる和遥の話し方は、今となっては誰も指摘しない。これが和遥だと分かってるから。
和遥と天磨は、中学時代に和遥が天磨の家の隣に引っ越してきてからというもの、和遥はどアホな天磨にいろいろ付き合わされたらしく。
それ以来、似ても似つかない2人なのに仲が良く、よく一緒にいる。それでも天磨にでさえ和遥は吃るけど。
「かず!!今日部活終わったら、かずんち行くから化学のプリント写させてっ。すっかり忘れててさっき怒られたー」
「う、うんっ…ててて提出期限…先週だったはず、だけど」
「そうそう!!そんなもんもらったっけーと思って一応探してみたら机の奥でくしゃくしゃのやつ見つけたっ」
「お前、マジでどアホだな。和遥も迷惑なときは迷惑だってはっきり言えよ。甘やかすからいつまでもこれなんだよ」
「確かにぃ~。テンテン、中間考査の結果もまた下の方だったんでしょ~?」
「別にいーんだって!!ほら、早く部活行こうぜっ。かず、また明日な!!」
「あっ…が、がが頑張ってっ」
ぐいぐいと後ろから背中を押す天磨に今日何度目かのため息を吐いて、和遥に別れを告げて昇降口へと向かった。
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