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これであの時の皇との行為にも納得出来る。玖珂白桜は淫乱なんかじゃなかった。 「ハクちゃんはね…すごく、すごく優しい子なんだ。いつも長袖を着ているのは親戚の人たちに素肌を他人に見せるなって言われているから。毎日ゆっくり眠れないのに弱音も絶対に吐かない」 響也の真剣な声が脳髄に響くたびに、俺の中では何故か黒いモヤモヤとした感情が生まれた。 ぎゅっと胸が痛くなって、イライラもしてきた。膝の上で握る拳に入れる力が強くなっていく。 「親戚の人たちには本当に感謝してるんです、っていつも言っていた。無理してるんじゃないかと思ったけど、本当の笑顔だったから……オレが下手にでしゃばっても無理だと思った」 あぁ……そうか。俺は、悔しいんだ。 こんな風に、玖珂白桜のことを話している響也が。俺よりもずっと玖珂白桜のことを知っていることが。俺と玖珂白桜ではあり得ない距離感を作った響也のことが、羨ましいんだ。 この感情に名前をつけるなら……そう――――――嫉妬、だ。 「だからオレが出来ることをしようと思った。少しずつ、人間恐怖症を治してあげたいと思ったんだ。オレはいろんな話をハクちゃんに聞かせて、ハクちゃんが笑ってくれるようになった時はすごく嬉しかった」 バカか、俺は。ついさっき、絶対に玖珂白桜を好きにならないと決めたばかりなのに、どうして嫉妬なんてしてるんだよ。 響也は本気なんだ。本気で玖珂白桜のことが好きだから、一生懸命近付こうと努力した。だから距離感が俺と響也で違うのは当たり前だろ。 「ハクちゃんは少しずつ、また人と話せるようになりたいって言ったんだ。だからまずは授業も寝ずに頑張ってみますって。でもオレは心配だった。家でも寝てないのに学校でも寝なかったらいつ寝るんだって」 夜が足を伸ばして来た時間帯。何も気づけなかった自分の不甲斐なさに、夜に溶けて消えてしまいたいと小さく思った。 .
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