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……が、本人が望んでいないことを考えても何もいい案は見つからず。結局、俺たちに出来ることは学校でなるべく話しかけてあげる事だと天磨が大きく叫んだ。
宇賀神に至っては学校が違うから中々会えないけど、もう少しで夏休みにも入るし会える機会は増える。
俺は学校で、どうやって玖珂白桜と接したらいいのかまだよく分からない。いろんなことが突然に起こりすぎていて、自分でも少し混乱しているのが正直なところだ。
今まで嫌悪していたやつにいきなり態度を変えろって言われても無理な話だし、しばらくは冷めた態度で接してしまうかもしれない。
いや、それ以前に響也たちのように自分から話しかけることはほとんどないだろう。女に自分からわざわざ話したことなんてほとんど無かったから。
「ま~とりあえず、テンテンは夏休みまでの残り4日、お弁当作り頑張ってね~」
「おうっ任せろ!!」
「じゃ、五十嵐と南条の連絡先も教えてくれよ。LINEでいいからさ」
「はいは~い」
早速響也と宇賀神は携帯を取り出して交換している。俺も無愛想になりながら携帯を響也に向かって投げた。
何も言わなくても俺の言いたいことが分かっている響也はそのまま俺の携帯も一緒に操作する。
そこへ天磨のお袋さんが帰ってきて、俺たちは挨拶だけをしてそれぞれの家に帰った。
電車を降りて響也と分かれ道の所でいつものように別れた後、俺は歩きながら空を見上げる。
いつの間にか梅雨明けしていて、洗われて清められたように透き通った星空がそこにはあった。
玖珂白桜の髪のような色をしたたくさんの星。きっと彼女がこの星空を見たら感嘆の溜息を漏らして感動するんだろう。
無意識に、玖珂白桜のことを考えながら歩いていることに、俺は気付いていなかった。
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