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頬に触れて離れていく薄い唇。その下にある色気漂うホクロを無意識に目で追っていた。 おっとりとした雰囲気に私も和やかな気持ちになる。槙志さんとの時間が一番安心するのは、この人の雰囲気にのまれているからだと思う。 「槙志さん…」 「なんだい??」 柔らかく、絶対に落ち着ききった表情で微笑む槙志さんの背中に腕を回して、大きくて広い胸に身体を預けた。 「本当に天使は甘えん坊だね?」 「…槙志さんにだけ、です」 「嬉しいよ、私の天使」 優しい手付きで私の頭を撫でてくれる温かい手が大好きで、私はさらに槙志さんの胸にすり寄った。 ふわっと香る大人の男性らしい、甘い匂いが私を包み込み、さらに心がほっとする。私の大好きな匂い。 「天使、顔を上に上げてごらん??」 言われた通りに少し頭を胸から離して上を見上げると、間髪入れずに槙志さんの唇が降ってきた。 私の顎を指で持ち上げて、唇を重ねる。ぬるっと舌が入ってきて、身体を硬くさせた私を安心させるように、私の手を取って指を絡めた。 「んぁ…ふ、むぅ」 「天使……もっと大きく口を上げてごらん。そう…いい子だ」 絶妙な舌使いに頭がボーッとしてくる。 ――――――あぁ、また睡眠薬でも飲まされたのかな。眠いな……。 だんだんと、黒い闇が迫ってくる。光の幅が縮まっていき、最後に見えた槙志さんの表情は、いつもと同じように穏やかで。 少し頑張って瞼を持ち上げようとするけれど全然敵わなくて。強烈なだるい眠気に瞼が重くなり、そこで私の意識は途切れた。 「愛してるよ…私の、天使」 そう呟いた槙志さんの声は、私の耳には届かなかった。 .
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