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夏の夕闇がにわかに濃く迫ってくる時間帯になり、オレはさすがに母親が遅いことに気付いて携帯をポケットから取り出すと。新着メールと電話が1件ずつ入っていた。 嫌な予感がしてすぐにメールを開いてみれば、案の定、オレがどこにいるか分からなかった母親はすでに買い物を終えて先に帰るという内容だった。 電車を使えばそんなに家は遠くないけど、メールにも電話にも気付かないほどにハクちゃんのことだけを考えていたのかと思うと自分でもドン引きしそうだ。 「はぁ…」 重い溜息を吐いて、腰を上げる。夕方になったことで夏の日差しは和らぎ、風のおかげで涼しさも感じる。 デパートの最寄駅に向かって歩きながら、無意識に白金の目立つ美少女を探してしまう。こんなところにいるわけがないのに。 どこかのお母さんが小さな女の子を「さくら!!」と呼んだ時は、思わず「ハクラ」に聞こえて振り返ってしまった。 ちょっとした期待が大きく外れて、勝手に落ち込むオレ。もう二度と会えないんじゃないかとさえ思えてきてしまう。 デパートから徒歩で3分ほどの駅から電車に揺られて家に帰る。電車の窓から見える流れる景色も覚えていない。気が付いたら、もう家の近くの細い道を歩いていた。 オレの家は大通りの1本中にある道路沿いにある。近くにコンビニが1つあるくらいで、畑や田んぼが多いところ。周りにはちらほらと家が建っているだけで地味な土地。 トッキーの家はすぐ隣にあるけど、他の家とは少し離れている。そんな田舎染みた道を下を向きながら歩いていた。 とぼとぼと力なく歩きながらふと、足元が暗くなり人影だと分かって顔を上げると。そこにいる人物に、思わず目を見開いた。 あまりの重症に、幻覚でも作り出したのかとさえ思った。歩きながら眠っているのかもしれないとさえ思った。 ――――――でも。 「…っ…響也、さん…!!」 オレの名前を呼んで、オレの胸に飛び込んできた白金の美少女に触れた瞬間。幻覚でも夢でもないんだと、実感した。 .
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