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昇降口で靴を履き替え、外に出る。さっきよりは弱くなったけど雨が止む気配はない。
重くなる体を無理矢理動かし、傘を差す。部室までは外から行かないと行けない。着替えたら一度部室でミーティングをしてまた校舎内に戻り練習するのが雨の日のパターン。
「でぇ~テンテン、今回は中間考査何位だったの~??」
「えーっと、確か314位!」
「何で自慢してんだよアホ。後ろに3人しかいないじゃねぇか」
「別にいーのいーの!!県大会このまま順調に勝ち進むからさっ」
「あははっ~さすがテンテンだねぇ」
野球部は既に甲子園出場をかけた県大会が始まっている。今のところベスト8まで出揃ったらしく、その中にうちの高校も入っていた。
うちの高校の野球部エースだと認めたくはないこいつが、めちゃくちゃ点を入れているらしい。今週の土曜日、つまり明後日がベスト4をかけた試合。
相手も強いが恐らく勝つだろうと校内では話題になっている。
「それにしても、やーっぱ今回も姫は満点でトップだったな!!すっげぇー」
「いつも授業中寝てるのに満点ってぇ、羨ましいよね~」
「……」
「天才お姫様は今日も可愛かったかっ?」
「そりゃあ、もうねぇ。6時限目終わったあとに目開けててビックリしたよ~。貴重だったなぁ」
「マジで!?俺も見たかったー!!」
天磨は玖珂白桜のことを『姫』と呼ぶ。いや、天磨だけじゃない。結構そう呼んでいる人が多い。
姫ってなんだよ。厨二じゃあるまいし。バカバカしい。
彼女のあだ名は他にもたくさんある。例えば『お人形さん』とか『白桜様』とか『金持ちお嬢様』とか『眠り姫』とかさらには『神様』なんて呼ぶ奴もいる。
みんな頭沸いてんじゃねぇのっていつも思う。人間なんだから神様なわけねぇだろって。つーか神様なんていねぇし。
「んじゃ、俺はこっちだから!!帰り待ってろよなー!!」
「はいは~い」
「10分待っても来なけりゃ帰るから」
そう言い別れて、俺と響也も部室に入った。
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