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私の腕の中から逃げ出してしまったウサギさんを追いかけて大通りに出たとき、車で私を探していた彩人さんに見つかってしまった。
『白桜、探したよ…』
顔に虚脱したような安堵の色を浮かべて優しく私を抱きしめた彩人さん。私を車に乗せた後、すぐに誰かに電話をかけて、会話の内容から槙志さんと聖瑛さんだって分かった。
家に帰ると一番に唯弥くんが飛び出してきて、思いっきり抱きしめられたのを覚えている。
聖瑛さんはずっと無言だったけど、怒っているのは明らかだった。俯いてばかりいた私を槙志さんがお姫様だっこでリビングのソファに下ろした後、どうして家から出たのかを聞かれた。
正直に答えると、その場で濃厚なキスをされて。あの時、槙志さんは何か言っていた気がするのに、キスで意識が朦朧としてしまって覚えていない。
それからだった。家中の窓やドアに鍵がかけられたのも、聖瑛さんが特殊な小型発信器を私につけるようになったのも、身体を求められるようになったのも。
絶対に1人で歩くことは許されない。常にどこに私がいるのか、4人中2人は分かるようにしておく。私の自由は、家の中だけ。だけど外に出てはいけない。
様々なルールが決められて、それでも私は嫌だと感じることはなかった。むしろ、ここにいてもいいんだ、と思えて嬉しかった。
でも今思えば、それもすべて玖珂家の人たちの無理な優しさだったのかもしれない。
未成年の私が1人で生きていくことなんて出来やしないから、親権を与えられた槙志さんには私の面倒を見る義務がある。
勝手に私が逃げ出して事故や事件に巻き込まれた時、責任を問われるのは槙志さん。だから仕方なく、私を玖珂家に置いておく。
私なんかを引き取ったことを、きっと後悔している。こんな風に思いながら玖珂家にいるのは、私が耐えられない。
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