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そんな私の想いは、報われた。
響也さんの家の前でインターホンを鳴らそうか迷っていた時。
女性が来たところから同じようにこっちに向かってくる人。下を向いていて私には全く気付いていないみたいだけど、だんだん近くなるにつれて私は心臓が破裂しそうだった。
明るい茶髪。すらりとした身長。ベージュのハーフパンツは腰パンしていて。ロゴが入った白のTシャツから伸びる腕はサッカー部らしくなく、あまり焼けていない。
会いたくて、会いたくて。
でも今日で、お別れする人。
指先一つ動かさずに彼を見つめ、響也さんがすぐ目の前まで来たとき、顔を上げた。
―――――グリーンのカラコンじゃ、ない……。本来の響也さんの瞳は、色素の薄い茶色なんだ。
響也さんのことをまた1つ知れて嬉しくなった。響也さんに会えて嬉しくなった。だから。
「…っ…響也、さん…!!」
思わず、触れたくなってしまって。私は響也さんの胸に飛び込んだ。
たくさん歩いたから汗かいてるのに、とか。暑いから抱きついたら余計暑いのに、とか。そんなことは全て吹っ飛ばして。
ただただ、会いたくて仕方なかった響也さんの体温を全身で感じた。
「ハ、ク…ちゃん……??」
「…響也さん」
「どう、して…」
「響也さんに、会いたくて」
「…っ…」
響也さんはまだ信じられないようで、恐る恐る私の肩を掴んで一度身体を離された。必然的に響也さんの顔を見上げると。
「本当に…ハクちゃんだ…」
「ふふっ、はい」
「……ハクちゃん」
「はい、響也さん」
私の頬を両手で包み込み、親指で瞼や鼻、唇や頬を確かめるようになぞっていく。少しくすぐったくて響也さんの手の上に私の手を重ねた。
嬉しくて嬉しくて自然に頬が緩んでしまう。そんな私とは違って、響也さんは呆然としながら私の名前を繰り返し呼んだ後。
「ハクちゃん……っ!!!」
力強く、抱き締められた。
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