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そして俺たちの試合の日がやってきた。一足先に野球部はベスト4を勝ち抜き決勝戦まで行ったものの、甲子園常連の高校に惜しくも準優勝。
俺たちサッカー部は県大会ベスト8まで勝ち上がってきた。去年はベスト16で敗退してるから、先輩の記録よりはいい。
けどこんなところで満足出来るほど俺たちの練習は甘くなかった。だから何としてでも、勝ちたい。
相手は去年ベスト4まで進んだ強豪校。前半は1-0でリードされていたが後半、俺のパスからチームメイトがゴールを決めて同点。
そして試合終了間近、響也との連携プレイで勝ち越しゴールを決めた。
外見チャラ男の響也だが、サッカーはうまい。はっきり言ってチャラいのは見た目と喋り方だけ。中身は至って真面目だ。
気持ちのいい汗を拭いながら響也とハイタッチ。あと2回勝てばインターハイ。
しかし現実は甘くなかった。準々決勝の相手は去年の試合で勝った高校なのに、この1年で相当な力をつけたらしい。3-1で負けた。
俺たちの夏は終わった。とかちょっとかっこ良く言ってみる。全然かっこ悪いけど。めっちゃ泣いたし。
こうして俺たちは県大会ベスト4という成績を残せたものの、目標のインターハイには届かなかった。
梅雨に入り、毎日雨の日が続く。サッカー部の練習があればテンションは下がる雨の日も、引退となれば何とも思わない。傘忘れなくてよかった、くらいだ。
部活が引退となれば高校3年がやることはただ1つ。“受験勉強”と言う名の地獄だ。
俺は一応大学志望。響也も同じだ。天磨は居酒屋をやっている父親の店を継ぐらしい。あいつ、アホのくせに実は料理が出来る。
父親の影響らしいが、初めてそれを知ったときの衝撃は有名なプロサッカー選手が引退発表したときと同等、もしくはそれ以上だった。
アホのくせに料理出来るとか。アホのくせに料理出来るとか。野球以外に特技があった天磨を見て、焦燥感を感じるようになった。
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