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あ……響也さんの、匂い…。
胸いっぱいに吸い込みたくなるような匂いに、心がホッとする。私も響也さんの広い背中に腕を回して、必死にしがみついた。
「ハクちゃん…ハクちゃんっ…会いたかった…!!」
「私も、です…っ」
「会いたくて会いたくて、抱き締めたくてたまらなかった…本当に、本当に…っ」
「……っ響也さん」
噛みつくような声で言われて、私はこんなにも想われていたのかなとちょっと自惚れそうになる。もちろん、すぐに振り払ったけど。
「でもどうしてここに…?」
少し落ち着いてきた響也さんは抱き締める力を弱めた。響也さんの色素の薄い茶色の瞳に私が映っている。それだけのことですら、嬉しかった。
心底、不思議そうな響也さんに、家を出てからここまで歩いてきたことを話すと目を見開いた。
「ハクちゃんの住んでいる家…ここからそんなに遠くないってこと??」
「た、ぶん…結構歩いたんですけど、それでも車なら15分もしないと思います」
「ってかハクちゃん裸足!?何で裸足!?」
「あ…えと、」
「怪我までしてるじゃん!!とりあえず、オレん家上がってから話はゆっくり聞くからっ。足以外に怪我してるとことかない!?痛いところとかは!?」
「な、ないです」
「それならよかった…さ、中に入ろう。疲れたでしょ?」
私の手を握りながら腰も支えて玄関まで誘導してくれた響也さんにお礼を言って、開いた扉から玄関の中にゆっくりと足を踏み入れた。
瞬間、パタパタと忙しなくスリッパの近付いてくる音がしたと思ったら。
「響也ー!!あんたどこに行っ…て、たのよ……」
さっき見た女性がエプロン姿で玄関前にやって来て、私の姿を見るなりその場で固まった。
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