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固まる女性を目の前に、姿勢を正してお辞儀をしながら「お邪魔します」と小さく呟いた。
すると女性は私と響也さんを交互に見ながら、口をパクパクさせる。細身で私と同じくらいの背丈のせいか、親近感を感じるような人だった。
「母さん、この子はオレのクラスメイトの玖珂白桜さん。この暑い中たくさん歩いて足も怪我してるんだ。中に入れるよ」
「え、あ、えっまぁ、全然構わないけど…」
「ちょっと濡れたタオル持ってきてくれない??足を拭かせたいから」
「分かった、わ…」
こういうとき、私はどんな態度をとったらいいのか分からない。日本はとても礼儀正しい人が多いって聞いているから、アメリカでの態度は失礼かもしれない。
そう考えると逆に何も言わない方がいいんじゃないかと思い、お礼も謝罪の言葉すら言えなかった。
「ハクちゃん、座ってていいよ。足の傷も見せて」
「…はい」
玄関前の廊下に腰をかけて、足を伸ばす。響也さんは私の足元にしゃがみこんで、そっと私の足首に触れた。
「足の裏、やっぱりところどころ切れてる…赤くなってるし…ちょっと触るから痛かったら言ってね」
ニッコリと微笑む響也さんにこくりと頷くと、足についた砂を優しく落としてくれる。
響也さんの手から伝わってくる体温がとても高くて、触れられているのが気持ちよかった。
「よし、砂や汚れはだいたい取れたかな。傷は部屋に上がったら消毒しようね」
「はい…」
「……こんなに綺麗な素足なんだから、もっと自分を大切にして??」
「は、い…」
足首に触れていた響也さんの手が、ゆるゆると徐々に上に上がってくる。くすぐったくて足をびくつかせると、響也さんの熱い瞳が私を射ぬいた。
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