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燃えるような瞳を向けられている。私はどうしたらいいのか分からなかったけど、響也さんの色素の薄い茶色の瞳を真っ直ぐに見つめた。
「ハクちゃん…」
甘い、熱っぽい声で名前を呼ばれた。ドクン、と心臓が跳ね上がる。
「はいはいお待たせー!タオルだけでいいの?お風呂入った方がいいんじゃないかしら??」
そんな私たちの世界は、響也さんのお母さんの登場で消えた。響也さんはお母さんからタオルを受け取って、私の足を優しく拭いてくれる。
お母さんがこの場にいてくれてよかった、と意味も分からずにほっとしている自分がいた。
「はい、ハクちゃん。上がっていいよ。汗かいただろうし、ゆっくりお風呂に入った方がいいね。母さん、お風呂は溜まってる?」
「溜まってるわよ。えと、白桜ちゃん、よね。どうぞ遠慮せずに入って??着替えは私のを貸すわ。身長は同じくらいだし、あなた細いから少し大きいかもしれないけど…」
「あ、いえ…こちらこそありがとうございます」
「ハクちゃん、こっち」
響也さんは自然と私の手を握って、浴室まで案内してくれた。後ろで響也さんのお母さんが「まぁ」と少し嬉しそうな声を出す。
それがとても恥ずかしくて、俯きながら響也さんに誘導されるがまま、浴室の中に入った。
「ゆっくりしてきていいからね。上がったらご飯食べよう。たぶんこの匂いは鯖の味噌煮だから」
「…本当に、ありがとうございます。お風呂、お借りします」
すごく申し訳ない気持ちと、嬉しい気持ちが混ざって曖昧な表情になってしまったかもしれない。
パタン、とドアが閉まるのを確認してから、着ていた淡いピンクのワンピースを脱いでいつも手首につけていたゴムで髪を後ろで1つにまとめた。
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