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お風呂から上がってリビングに行くと、あまり嗅ぎ慣れていない良い匂いに鼻孔をくすぐられた。 リビングに対面しているキッチンには響也さんのお母さん。その隣に手伝いをしている響也さんが立っていて、私に気付くと何故か目を見開いた。 「……あ、の…お風呂、ありがとうございました」 「あらあら、きちんと髪を乾かさないとダメよ。響也、ドライヤー出してあげなさい」 「う、うん」 「それにしても、同じ身長なのにやっぱり少し大きいわね。ズボン、ゴムが入ってるやつにしてよかったわ。あ、そのワンピースは洗うから洗濯機に入れておいてね。響也、頼んだわよ」 「…分かってる」 お茶碗にご飯をよそっていた響也さんは手を止めて、私の傍に来てくれた。でも何故か、私と目を合わせてくれない。 「ハクちゃん、こっちおいで」 響也さんに手招きをされてリビングを出た響也さんの後ろをついていく。さっきの浴室の前にある洗面所に入った。 白い棚からドライヤーを取りだし、私が持っていたワンピースを洗濯機の中に入れる。その動作の間にも、目は合わない。 「髪の毛、自分で乾かせる??」 「あ、はい。大丈夫です…」 「そう。じゃあオレはリビングに戻っているから何かあったら呼んでね」 目を合わせずに早口で言った響也さんはそのまま洗面所を出ていこうとした。目が合わないだけでとても不安になっている私は、咄嗟に響也さんの服の袖を掴んだ。 「……ハクちゃん?」 「あ、の……に、…たか」 「え??」 「嫌いに、なりましたか……??」 力の抜けていくような、小さな声。こんなことで泣かないで、と自分の涙腺を叱る。 ゆっくりと顔を上げて、今度は確かに目を合わせ、もう一度問いかけた。 「私のこと、…嫌いに…なりましたか」 .
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