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実際にハクちゃんを彼女に出来たらどんなに幸せなことか、なんて思いながらニコニコとハクちゃんを見つめている母さんに溜息を吐いた。
食べる仕草もいちいち可愛くて胸がキュンキュン言っているのに気付かないフリをして。ゆっくり、丁寧に食べるハクちゃんの隣で、俺も鯖の味噌煮に箸をつけた。
やっぱりというか予想通りというか、ハクちゃんはオレの量の半分以下をオレが食べるスピードの2.5倍近くかけて食べ終えた。
母さんはハクちゃんの食べた量とスピードに目を丸くしたものの、基本的には終始にこやかだった。
食事を終えると、母さんはこれから友達と会う約束をしているらしく、ハクちゃんに「ゆっくりして行ってね」と言い残して早々と家を出て行った。
出る間際、「頑張れ響也っ」と語尾に音符でもつきそうな声で言われたけど苦笑いだけを返して、母さんの姿を見送った。
玄関の閉まる音と同時に、これからこの家の中にはオレとハクちゃんの2人きりだと思うとやけに緊張してしまう。
何とか自分を落ち着かせて、忘れてはいけない話をするためにハクちゃんをオレの部屋に案内した。
「どうぞ~」
「失礼します…」
なるべく、空気が重くならないように普段の伸びた声を出す。オレの部屋に入るなり、ハクちゃんは観察するようにキョロキョロと顔を動かす。
その度に白金の髪が揺れて甘い匂いが鼻孔をくすぐる。おかしいな、同じシャンプーをしたはずなのに、全然違う。
そんなことを思いながら、ハクちゃんを座布団の上に座らせて、オレも向かい合うようにして座った。
こうして真正面から見ると、やっぱりハクちゃんは本当にお人形さんみたい。何で口紅をつけてるわけでもないのに、唇はぷっくりと色づいているんだろう。
何でマスカラをしているわけでもないのに、睫毛はくるんと上を向いてあんなに長いんだろう。
じーっとハクちゃんの顔を見つめすぎていたのか、ハクちゃんは目を泳がして、頬をピンク色に染めた。
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