468人が本棚に入れています
本棚に追加
白い肌にチークを綺麗に塗ったような頬に思わず手を伸ばしそうになるのをぐっと堪えて、口を開く。
「…ハクちゃん」
「は、ぃ…」
「お家に帰らなくて、大丈夫??今頃、親戚の人たちが探し回っているんじゃない?」
「………」
「家に帰りたくないから、家を出てきた、とか…??」
ハクちゃんは、家を出てから歩いていたら偶然にオレの家の前にたどり着いたと言っていた。だけど、家を出てきた理由はまだ聞いていない。
あの親戚たちがハクちゃんを簡単に外に出すとは思えないし、ハクちゃんと連絡が取れなかったこの2週間の間に何があったのかも気になる。
オレの質問に、ハクちゃんは俯きながら小さく、それでもしっかりと首を縦に振った。
何かを思いつめているような表情に、親戚たちに何かひどいことでもされたんじゃないかと不安になっている中、ハクちゃんが顔を上げた。
「……響也さんに、さよならを言いに…来たんです」
―――――――……え??
言われた言葉を理解するのに、時間はかからなかった。受け入れることは全く出来なかったけど。
鳩尾を打たれたような衝撃に声が出ないオレを真っ直ぐに見つめながら、ハクちゃんはもう一度、言う。
「響也さんにさよならを言って、そして玖珂家の人たちにもさよならを言おうと…」
さよなら……?
さよならって、別れを意味する言葉だよね?何で別れなきゃいけないの?意味が分からないんだけど。
でもハクちゃんの言葉にはまだ続きがあるようで、ギュッと膝の腕で小さな拳を作りながら震える声を出した。
「…そう、思ってたんです。響也さんに……会うまでは」
目に涙をいっぱい溜めて、今にも崩れそうなハクちゃんの身体は小刻みに震えている。オレは一気に押し寄せた衝撃の数々に思考が追い付かないものの、ハクちゃんの泣き顔は見たくなかったから。
ハクちゃんの頭を自分の胸に思いきり引き寄せて、細くてくびれた腰を身体が密着するように抱きしめた。
.
最初のコメントを投稿しよう!