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どうしてハクちゃんがオレにさよならを言いに来たなんて言ったのか、まだ分からないけれど。何かとても思いつめていることは確かで。
好きな子が思いつめているのに何も出来ない男にはなりたくないから、オレはハクちゃんが落ち着いて話せるようになるまで、優しく抱きしめながら頭を撫で続けた。
「……響也、さん」
「ハクちゃん…ゆっくりでいいから、話してくれる??」
ちょっと身体と身体の間に隙間を作って、額と額をくっつけながら静かに問いかけると、こくりとハクちゃんは頷いた。
そんな姿も可愛いすぎる、と叫びたくなるのをシリアスな雰囲気を目の前に抑えて、少しずつ話してくれるハクちゃんの心地いい声に耳を澄ませた。
話を聞き終えたとき、オレが一番に思ったのは……人として最低なことかもしれない。
自分は愛されていないんだと、玖珂家の人たちには迷惑しかかけていないだと本気で思っているハクちゃん。今の話で、ハクちゃんの新たな一面が見れたような気がした。
こんなに恵まれている容姿を持っているのに、自分には自信が全く持てない。自己嫌悪が強くて、自分を必要以上に卑下する。一度考えたら止まらない、ネガティブ思考。
儚くて脆い、1人では絶対に生きていけない子。だけど、人一倍、人のことを考えられる優しさと思いやりを持っている子。
だから、オレは思ってしまった。このまま、ハクちゃんをここにずっと置いておこうかと。
「ハクちゃんは家に帰りたくない?」
「…はい」
「オレにもさよならを言った後、どうするつもりだったの?」
「そ、れは…どこか遠くに行こうかなって…」
「…………ハクちゃんって意外とおバカさんだね」
「うっ…」
なんて、少しおちゃらけてみたらハクちゃんは初めて見るような罰の悪い表情をしていて。そんな顔も出来るんだ、と少し嬉しくなった。
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