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6月下旬の週末明け。連休の後の月曜日は学生から一番嫌われている。何よりも登校するのがめんどくさいからだ。 俺は基本的に8時には教室に入るようにしている。朝は苦手じゃないし、早く着いている方が気持ち的に楽だ。 「トッキーおはよ~」 「おっす」 「昨日進撃の最新刊出たの、見た~??」 「見てない。貸せ」 「そう言うと思って持ってきたぁ。オレって偉くな~い??」 「あぁ偉い偉い。だから早く貸せ」 「相変わらずだな~トッキーはぁ」 俺の前の奴の席に座って漫画本を差し出してきた響也に軽く礼を言う。この漫画、マジで面白い。今流行りの大人気漫画だ。 俺は漫画を読み始め、響也はその場で携帯をいじっている。前の席の奴が来ればどいたけど、去るつもりはないらしい。 俺の机に座ると言う何とも非常識なことをする響也だが、今は漫画を借りた恩もあって何も言えない。俺はスルーした。 「あっ来た~」 嬉しそうに顔を上げた響也の目線の先には、恐らくクラスで一番遅い到着の玖珂白桜。 俺も響也の声につられてちらっと後ろを見たが、元から白い顔は青白く、瞼は今にも閉じそうなほどに眠そうだった。 案の定、自分の席に着くなり鞄の上に頭を乗せて寝る体勢に入る。彼女の毎朝はいつもこれだ。 青白い顔でだるそうに席に着くなりそのまま寝る。酷いときなんて放課後までその場から動かず寝ている。 特に毎週月曜日にその確率は高い。青白い顔も月曜日が一番酷い。今にも倒れそうなくらいだ。 「ハクちゃん、土日何してるんだろうねぇ」 「知るか。興味ない」 「寝顔、見てみたいなぁ。いつも顔伏せてるから見えないし~。絶対可愛いよねぇ」 こうやって玖珂白桜のことを話すのは響也だけじゃない。わざわざ彼女を見るためだけに他クラスから来る奴もいる。 そしてただ寝ているだけの彼女を見て勝手に妄想をし、密かに騒ぐのが日常。 そんなことする暇があるなら勉強しろよ受験生と言いたいところだ。 .
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