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ハクちゃんの両手のひらで抱える事が出来そうな細くてしなやかな胴に、ごくりと唾を飲まずにはいられない。
こうして上から見下ろすと、本当にハクちゃんの肩は華奢で、細いなと思う。それなのに貧相な印象は受けない。細いのに胸は豊満だからだ。
白くて滑らかな素肌、艶やかな髪、くびれたウエストに綺麗な谷間。完璧すぎるだろ、と思うのと同時に。
あちらこちらに散らばる赤い痕。消えそうなものから、つい最近付けられたようなものまである。大きさも形もバラバラなことから、1人だけのものではないことが分かる。
この綺麗なハクちゃんの身体に、オレ以外の奴が触れていたと思うと、得体のしれない真っ黒な感情が津波のように押し寄せてきた。
「……ハクちゃん。いつも、どんな風にアイツらに抱かれてるの」
「っ…」
「ねぇ、ハクちゃん」
「……槙志さん、は」
「うん」
「優しく、抱いてくれます。いつも…温かくて気持ち良くて…」
「………そう。他の奴は」
「…っ…彩人さんは…コスプレ、とかシチュエーションに、すごい拘る人…で」
「………」
「唯弥くん、は…玩具が、好きで…聖瑛さんは……縛ったり、目隠ししたり…私を泣かせながら、…します」
聞かなければよかったと思った。ハクちゃんの口から聞いたのが間違いだと思った。
なんだこれ……すんげー苦しい。辛い。心臓を刃物で抉られてる気分だ。こんなの、オレらしくもない。
いや…ハクちゃんを好きになってからオレらしさなんてものは失ったようなものだけど。誰も好きになれないのがオレだったから。顔では笑っていても心は冷めきっていたのがオレだったから。
初めて人を好きになって、愛おしさを知った。小さな幸せを知った。嫌な嫉妬を覚えた。醜い欲望を知った。
恋が、こんなに幸せで辛いものなんだと初めて知った。
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