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最初は友達でもいいと思っていた。あのハクちゃんと友達になれるなんて、それ以上の幸せなんてないと思っていた。
…それなのに、人間という生き物の欲望は尽きるところを知らない。絶対に、浅ましい欲望がなくなることはない。なくなってくれない。
それどころか、どんどん欲望は息を吹き込んでしまい、膨らんでいく一方で。自分でも気付かないうちに、もう元には戻れないところまで大きくなってしまっている。
それが、人間。オレは、人間だから。だから、今の関係では満足出来ない。
「お願い…ハクちゃん……オレを、好きになって」
「……」
「絶対に、泣かせたりしない。ずっと傍にいる。玖珂家の奴らとは違う。身体だけじゃなくて、ハクちゃんの心が欲しい」
「……」
「お願い、ハクちゃん……本当に、好きなんだ」
「……」
祈るように素直な気持ちを、掠れそうになる声を振り絞って出す。伝わって欲しい。オレがどんなにハクちゃんのことが好きで大切に思っているか。
「…響也さん」
「……うん」
「…今はまだ、響也さんと話すようになってからあまり日にちも経っていないので…私の響也さんへの想いが響也さんと同じものなのかどうかは、分からない…です」
「…………う、ん」
予想外、だった。
オレはどこかでハクちゃんが首を縦に振ってくれる自信が100%近くあった。優しいハクちゃんだから、懇願するように想いを伝えたら受け入れてくれると思っていた。流されてくれると思っていた。
「響也さんが…友達になろうって言ってくれた時、とても嬉しかった…」
話すようになって、まだそんなに時間は経っていないけどそんなのは関係ないと思っていた。時間なんかかけなくたって、ハクちゃんのことを何でも知ってるような気分になって。
「だから……今はまだ、お友達でいてくれませんか…?」
あんなに知りたいと思っていたハクちゃんのことを、自分の物差しだけで測って、知ったような気になっていた。
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