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確かにハクちゃんは、とっても優しい。優しいの意味を、履き違えていた。人の言葉に流されることが、優しいわけじゃない。人の願いに首を縦に振ることが、優しいわけじゃない。
自分の気持ちを偽らず、正直に真っ正面から言ってくれる。相手を傷つけないように言葉を選らびながら、自分の思いを伝えてくれる。
それが、嘘で固められた優しさはではなく、本物の優しさ。
「響也さんのこと、人として…お友達としては、本当に大好きです。そしてとても感謝しています。本当に…いろいろ親切にしてくれて、響也さんの優しさに救われました」
―――――あぁ、オレが好きになった人は。
「響也さんに出逢えて、幸せです。ありがとうございます」
なんて、素敵な人なんだろう………。
「…ハクちゃん」
「はい」
「こんなオレを優しいって言ってくれて、ありがとう。こんなオレと出逢ってくれて、ありがとう…」
「響也さん…」
「ハクちゃんを好きになって、本当によかった」
「……!」
でもね、ハクちゃん。
オレは絶対にキミの心も手に入れてみせるからね。絶対にキミに好きになってもらえるように頑張るからね。
「ハクちゃん、これからもオレと…友達として、仲良くしてくれる??」
「…っもちろんです!!」
「それじゃ、約束」
「……はいっ」
額と額をくっつけながら、ハクちゃんの細い小指とオレの小指を優しく絡めた。
至近距離で見つめ合いながら口角を上げて笑うハクちゃんには、今のオレのドキドキは伝わっていないんだろう。
それを少し淋しく思いながらも、少しはスタートラインから前に進んだと確信して今はその幸せを噛みしめる。初めて、幸福感が理性に打ち勝った瞬間だった。
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