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南条叶貴side
高校生活最後の夏休みは、あまりにも早く過ぎた。
その理由は、今俺の隣で俺より30cm以上も低いところにあるプラチナブロンドの髪を持つ彼女のせいだと、確信している。
俺の反対側に、彼女を挟むようにして歩いているのは幼馴染の外見チャラ男。だらしなく頬を緩めて隣の彼女を見下ろす奴を、じとりと睨んだ。
視線に気付いた幼馴染も俺を負けじと睨み返す。でもすぐにプラチナブロンドに視線を戻して甘ったるい笑みを向けた。
「ハクちゃん、もう少しで体育祭だけど…種目は何に出るか決まった~?」
「いえ…まだ、迷ってます。運動は苦手なので…ちょっと不安です」
「大丈夫だよ、みんながサポートしてくれるから~。もちろんオレもねぇ」
「はいっ」
夏休み前ではあり得ないような光景。普通に俺の隣で鈴のような声で話して、花のような笑顔を浮かべる。
8月のお盆が明けた頃、隣の家の幼馴染の家からプラチナブロンドの髪が見えた時は思わず2.0の自分の視力を疑ってしまった。
その場で幼馴染をとっ捕まえて事情を洗いざらい吐かせて、つい3日前から幼馴染の家に彼女が居候していると聞いた時は面食らってしばらく動けなかった。
「オレは100m走と騎馬戦、あと何か適当に出るつもり~」
「そうなんですね。叶貴さんは何に出るか決まってますか??」
「…っ」
突然話を振られてぎくりとしてしまう。必然的に上目遣いで俺を見る彼女を真っ直ぐに見返すことが出来ず、視線を前に向けた。
「…200mと部活対抗リレーは決定してる」
無愛想になってしまった返事に内心自分に向かって舌打ちをした。夏休みが終わりすでに1週間が経とうとしているが、俺の彼女への態度は一向に変わらない。
それなのに彼女は嫌な顔一つせず、「頑張って下さいね」と優しく微笑むだけだった。
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